ジェフ・バトル君が優勝した今年の世界選手権の
    フリーのテーマ「アララトの聖母」。
    機会があったら、いずれは映画を見てみようと思っていたら、
    たまたま地元で中古のDVDを発見。



    アララトの聖母 [DVD]


    このパッケージの絵、ストーリーの中では大変重要なものなのです。
    画家アーシル・ゴーキーの「芸術家と母親」、
    NYのホイットニー美術館に所蔵されているそうです。
    (日本版、good job!!)



    アルメニア人の映画監督、サロヤンは
    1915年にアララト山の麓で起こった
    トルコによるアルメニア人虐殺の史実を
    (映画の最後の方に、証言などをもとにした史実である、との
     クレジットが出てきました)
    映画化する構想を立てます。
    サロヤンは、虐殺で母親を亡くしたあとアメリカに移住した
    アルメニア人画家、アーシル・ゴーキーを
    映画のストーリーの軸にと考えます。
    歴史検証として、ゴーキーの研究家で教授のアニ(女性です)に顧問を依頼し、
    アニの息子ラフィは、現場の雑用係として働きます。



    劇中劇のように描かれる、アルメニア人虐殺の映画、
    アーシル・ゴーキーの生涯、
    アニの過去、
    そして、ラフィ(父親はトルコ大使を暗殺しようとして射殺されたアルメニア人)の
    自分のルーツを探す旅・・・・
    複数のストーリーが、オーケストラのように
    同時に進行していきます。



    ジェノサイド(一国民・一民族皆殺し、という感じのニュアンスです)の
    話なので、本当に目を背けたくなるような
    残酷なシーンも出てきます。
    でも、最後まで見ると
    少し救われるような気持ちになります。
    アララトの聖母子像のレリーフがひとつのモチーフに
    なっている気がしました。



    イヴィツァ・オシム氏に興味を持ってユーゴスラヴィア関連の本を
    読んでいた頃にも思いましたが・・・・
    それほど大昔のことではないのに、
    考えられないほどの残酷な出来事が起こっていて。
    いろいろなことを考えたり、思いを馳せたりすることしかできないけれど、
    こうやって、あらゆるメディアを通じて沢山の人達に
    知ってもらうということがどれだけ大切なことか
    考えさせられました。



    このような題材を選んだジェフ君、本当にありがとう。
    演技のフィニッシュの、ひざまずいて天を仰ぐポーズが
    「祈り」のように見えたのです。
    画家アーシル・ゴーキーが見てきたもの、経験したこと。
    それによる、癒されない心の痛み。
    そして、祈るような想い。
    そのようなものがテーマになっていたのかなと、
    主観ですが、映画を観て思っています。